ADHD 治療 CPT(コンピューターを使った持続注意課題)検査について

ADHD 治療に、CPT(コンピューターを使った持続注意課題)検査を利用しています 。

 

・当クリニックでは、ADHD 治療に CPT(コンピューターを使った持続注意課題)を導入 し、治療に役立てるようにしています。ゲストの脳内の ADHD 関連システムの状況評価を し診断の補助にしたい時、抗 ADHD 薬を内服した場合の治療効果を検討する時、内服薬の 治療を中止するかどうかなどの治療上での検討時に、症状と共に CPT 所見も参考にしてい ます。 ・年齢的には、主に検査に乗りやすい 9 歳以降から高校生あたりに施行しています。成人 にも使用してきました。6 歳位から検査に乗れる人もいますが、8 歳以下では乗れない人も おられます。

 

・CPT 検査結果は 10 歳以降に多くの成人と同等結果になる CPT(ADHIT、これはインタ ネット上のフリーソフトです)を使っている中で、ADHD 児者では 9 から 10 歳以降でもず れが大きいことを多くの例が示しています。

 

・平成 30 年からは市販されている大人用 CPT も導入し、大人の ADHD の診断する上での 参考所見として利用しています。主に子どもに施行してきた CPT(ADHIT)は大人には簡単 な課題のようで、CPT(ADHIT)で健常結果でも、大人用 CPT でずれが大きい ADHD 者が 出てきます。

 

・主に学童世代に利用している CPT(ADHIT)では、〇と×が各々250 個出て、〇をなるべ く早く押す、×は押さないように求められます。検査は 13 分くらいかかります。〇の見逃 し数(10 歳以降での健常 10 以下)、×のお手つき数(10 歳以降での健常 10 以下)、押すま での反応時間(10 歳以降での健常 0.4 秒以下)、反応時間のばらつき(10 歳以降での健常 60 以下)を検討します。

 

・治療前に検査を受けて頂き、抗 ADHD 薬をある期間内服後に再度検討すると(現在は 6 か月開けて検査をしています)、ADHD 症状の改善と共に、CPT 結果も改善する例を多く経験させてもらいました。

 

・典型的な治療経過例(症例1)を示します(図1)。抗 ADHD 薬 x 内服治療を継続し、 症状が改善した時点で(図1)、CPT 上でどれ位健常に近づいたかを検討しました(図2)。 改善した症状と、改善した CPT 結果がある程度の期間持続してから、次に以下のトライを してみます。つまり内服中断で悪化するかどうかを検討します(図2)。CPT 結果が悪化す れば、まだ内服治療の有用性があると推測しました。悪化しなければ、そろそろ内服薬の 役目が終わりつつあると推測出来るのではと考えるわけです。もちろん改善している ADHD 症状が内服中断で悪化するかどうかが基本です。

ADHD CPTの検査について

図1 治療前(8 歳 11 か月)に比し、治療後 1,2,6,8,12 か月と、ADHD 症状は著明に改善(ADHD-RS は改善)を示しています。

 

図2  抗 ADHD 薬 x 継続で CPT 各指標は 10 歳以降健常者データに近似(点線以下)しています。 内服 3 日中断しての CPT 検査を 2 回する機会がありましたが、この時には若干の悪化がみられ、 内服再開で改善していました。徐々に指標全体が健常化し、2 回目の内服中断では悪化は 目立たなくなっています。 CPT 結果の改善に至る要素は、①薬物、②検査への慣れ、③加齢による改善の3つが問題に なります。本例の結果解釈では、②③の影響もあるでしょう。1 年の経過ですが、9~10 歳は多数派 も少数派も、急激に ADHD 関連システムが改善する時期でありますし、また慣れの影響もあります ので、解釈は慎重にすべきです。が、おそらく①の影響が一番と推測しています。少なくも内服治 療中断で指標が悪化することは薬効が明確であることを意味しているでしょう。

 

服薬による改善の症例

・CPT 結果の推移は、抗 ADHD 薬が一過性にプログラムソフトの活性化をしているだけで なく、より良いプログラムソフトに徐々にバージョンアップしているように感じています が、今後の検討すべき課題です。

 

ADHD の薬物治療に関して、良いイメージを持って頂けるのではないか、薬物治療が何 をしているのかのイメージ作りをサポートするのではと思い示しました。参考になれば幸いです。

 

図3 症例2で、CPT(ADHIT)の反応時間記録の結果を継時的に並べてみると、このようになります。服 用なしの 9 歳 0 か月では、押すまでの反応時間がばらついていることがわかります。グラフの縦軸 は反応時間、横軸は反応時間の経過です。「服薬なし」と、内服薬 A 服用時点では、改善は示して いません。内服薬 B 服用で、著明な改善(反応時間が安定し平坦なグラフに変化)を示(9 歳 9 か 月)し、4日中断(内服忘れ)してきた外来時点(9歳9か月)では露骨に悪化(検査への構えが崩れ た)しています。そしてその後内服薬 B を再開して再度著明に改善し(9 歳10 か月)、その後も良好 状態が継続しています(10 歳 0 か月)。

 

図4 抗 ADHD 薬を服用すると、症状は改善し CPT 結果も改善する。服用を中断すると症状と CPT 結 果が悪化する。抗 ADHD 薬再開で、症状と CPT結果は再度改善する。その後に、内服を中断して も症状と CPT 結果が悪化しない時期が来る。その時には内服薬の辞目ることが可能な時期に入っ ていると推測。このようなモデルを考えることが出来るのではと、これまでの経験から考えています。